【書評】わたしを離さないで
ノーベル文学賞受賞したばかりでなかなか手に入り難い、カズオ・イシグロ氏の著書で、中でもドラマ化されているものを読んでみました。
ドラマ気になってたし、おかんも読みたいって言ってたので買いました。
ADHDでも読めるかどうかはわかりません・・・・・・私は読書家なので、読書することが苦だったりすることはないです。
LDで言語・読解能力系の障害が併発していると読書が難しい場合もあるし、そもそもADHDはひとつのことに集中するのが難しい生き物だから、うん、私は過集中に大体頼るけどね。
アスペルガーだと、この作品、そもそも意図を読み取り難いので読みきるのは難しいかもね。
でも意図とかはあんまりない気がする。
特殊な設定下において、情緒的な雰囲気を楽しんで下さいという感じ。
いってみればフランス映画、だからなんらかの意図を持って書かれた作品ではない。
カズオ・イシグロ氏的にはネタバレは大いに結構、というか最初の方で既にん?って思う描写がいっぱいあるし、初期の段階でああ大体お察しね、という感じなので、後はどうなっていくのかなというドキドキ感を楽しめばいいのだと思う。
感想っていうほどの感想がないので、謎解きみたいな書評になっています。
でも一応ネタバレがあるので続きをどうぞ
---------------------------------------
はてなブログの続きって、どこからが続きなのかわかりにくいんだよ!
というわけで線的なものを引いておく。
どうなっていくのかなということすら実はネタバレなのだ
A.どうもならない。
日本が製作したドラマ版では事件が色々起こり、クローン人間に対する人権?差別運動みたいなことも起こり、誰かが脱走したり失踪したりあるんだけれど、原作ではそういった描写はない。
(気づいてないだけかもしれないけれど、淡々と話が進んでいくから仕方がない)
つまり、彼ら登場人物全員が正しく(?)使命を終えて命を終えていくのである。
残酷描写疑問点
なぜそこに誰も疑問を抱かないのか?――洗脳説
クローンたちは、自分の境遇に疑問を抱かないのは何故か。
施設では高度な洗脳が行われているからではないだろうか。
というよりは、人間は昔から行ってきたではないか、奴隷や、王族や、なんやかんや。
神の元に平等というキリスト教徒が多いイギリス社会の時点で王位継承なるものが矛盾を生み出しているし。
無意識というか生まれた時からの宿命をすんなり受け入れる土壌があったのだろうなと思う。
そう解釈するしかないし、物語も結局何事も起こらず終わっているんだもん。
トミーだけは違っていた、だけど運命を受け入れた事
トミーは幼い頃癇癪を起こす問題児でいじめられっこだったけれど、最後の方に
幼いながらに、自分はどういう目的で生まれここにいるかわかっていた、だから癇癪を起こしたのではないか
という推測をした描写があったんだけど、それは
ルーシー先生と会話したおかげで癇癪が収まった=疑問を抱かなくなった?
つまり運命を受け入れる覚悟ができたということなのだろうか。
ルーシー先生が施設を辞める直前に施設の子供たちの運命のことを思いっきりネタ晴らしするんだけれど(たぶんここで読者も、うわっここまで喋っちゃって大丈夫なの?と思ったであろう)当の子供たちは平然としていたわけで。
ただ「提供者」とか曖昧にぼかした表現だったので、そこまで衝撃は受けないのが作者?翻訳者?の表現の上手いところ。
この物語は「衝撃的な事実・出来事」をできるだけぼかして進めていく趣向のものなのかなあとなんとなくこの辺りで悟りますがところがどっこい!
外の世界でのマダムとエミリ先生との再会でも何も変わらない恐怖
小説というのは大体起承転結に沿って進むものだけど、この物語でいうと承承~承転・・・・・・投げっぱなし
みたいな感じだと思います(適当)
最初の承が、「提供者」という言葉が出てきた時?で、エミリ先生の告白が転にあたるのかなあと。
でもね、あんな話を聞かされて、猶予(という名の見逃し?)が無理だと言われ、平然としていられるか?ということです。
クローンに魂があるのかないのかと話題にしていたけれど、この後、特に何が変わることもなく(ページ数的にも起こりようがない、あったとしても自決とかバッドエンドであろう)トミーは「提供者」の役割を全うする。
キャシーがどうなったかはご想像にお任せください、まぁ他の「提供者」と同じ人生の終わり方をしたのだろうと推測。
(ドラマ版は違うらしい)
そんな彼らに魂はないんじゃないかって思ってしまったのです。
私がキャシーなら何もかも放り出して逃亡するでしょう。
トミーならパニックになって自決する気がします。
そこ、何平然と受け止めているんだ!
ルースが猶予は無理だと知ったら、彼女の性格上、なんらかのアクションを起こしたような気もします。
だからこの投げっぱなしの終わり方が実にホラーで仕方がない。
マダムとエミリ先生の活動とは贖罪なのだろう
結局のところ、外の人間というのは私たち人間が家畜にしているのと同じことだ。
臓器提供クローンというのは家畜と全く同じ
と誰かの書評で見ました。
全くその通りなのです。
もしこの世に「提供者」が存在して、私たちが利用できるのだとしたら、何も考えることなく利用しているのかもしれません。
でも、菜食主義者って居ますよね、動物を殺生して食べることを好まない人。
リアルファー反対派の人。
菜食主義者はちょっと違うのですが、リアルファー反対派の人の殆どは、おそらく牛肉や魚を食べるでしょう。
リアルファーは反対でも、自分のためなら仕方がないっていう意識がどこかにある。
つまりマダムやエミリ先生がしてきたクローン人間に対する運動
(詳細はあまり出てこないですが、おそらくクローンも同じような人間なのだから――といってもクローンはクローンという前提――もう少し扱いをよくしよう、人間のように育てようと働きかけるようなこと?)
も、それをすることで、自分自身の罪から逃れられようと考えているだけなのではないかと思われます。
実際のところは、例えばエミリ先生の孫が難病に犯されて臓器提供が必要だといわれた・・・・・・となると、迷わず「提供者」を利用するんではないかと。
つまりこういった活動は罪悪感から来る逃げみたいなモノなんですよね。
うーん、私はクッソ冷めきった人間なので、ボランティア精神とか持ち合わせてないんだけど(ADHDに生まれたからなのかもしれないけど)
人間ってのは所詮自分(や自分の血を分けた家族など)が一番可愛いんすよね。
クローンを逃がしていたらどうなっていたのか
というかたぶん無理なんでしょうね、あの世界では。
すごく厳密に管理されていて、誰がどこで何をしているかまで把握できる状態。
暴動が起きるかもしれないことまで想定されている、完璧にクローン人間を統率して支配下に置くことができる世界。
キャシーとトミーも察したんでしょうね。
最近甲殻機動隊を見ているので、なんか電脳システムみたいなのですぐにピピピっと突き止められちゃうんじゃないかな。
甲殻機動隊で思い出したけど、SFなのに田舎くさいのはなんで?
とにかく全体的に古臭い感じがする。
ノスタルジーというのだろうか、なんかこう、田園風景を思い起こすような。
クローンという近未来(いやもう現実)の話のはずなのに、なんとなく全体的に田舎くさい。
仮説を立ててみました。
クローン育成場は物凄く劣悪な環境だった
ヘールシャム出身が特別なことだった
というのは、エミリ先生が言っていたように、クローン人権運動的なものの成果であり(それでも都会とは暮らしが全然違う)ほかの施設は更に劣悪な環境だったからである、ということではないんでしょうかね?
それにしても、外の世界に出た後に「提供者」は特に衝撃を覚えたとかいうわけじゃないので、単純に「作品が古い」ってだけのような気も・・・・・・しませんね
それを言えば甲殻機動隊も古い作品だからやっぱりおかしいですね。
意図してそう描かれたのでしょうか
時代設定がかなり前だった
この小説が日本で発表されたのが2006年らしいので、英国ではその2年前くらいになるのかな?とすると2004年、といえば何をしていたかな、スマホはなかったね。
PCはあった。
音楽を聴くツールが「ウォークマン」そしてCDは出てこずにカセットテープ、もしくはレコードということは、かなり古い時代設定ですね
調べると1982年にCDの生産開始、ということでこの物語の時代設定はなんと1982年以前!!
というわけで、時代設定の問題らしいということがわかりました。
甲殻機動隊について語ると長くなりすぎるので止めます。
クローンの歴史に触れておく
1982年より以前にクローンはつくられていないと思います。。。
それはおいといて
クローン人間はどうやってつくるのか
www.nicovideo.jp見れなかったらゴメンネ
人型クローンを作ることは可能か
ips細胞が発見されて、いよいよ医学に応用されるっちゅうのにこんな疑問を抱くのもアホくさいですが
iPS細胞を使って腎臓病を治す!
Newsletter Vol 23- Center for iPS Cell Research and Application, Kyoto University
当たり前のように可能です。
もしかしたらどこかに紛れ込んでいるかもしれません。
クローン人間のさきがけみたいなものとしては、ミトコンドリアを増殖させて人間を作った?パラサイト・イヴがありますね。
発売日をみたら、結構「わたしを離さないで」と近いねんな・・・・・・
そこからたった10年でips細胞が発見されるってなんかすごいですね。
クローン人間を作ったらどうなるの?
日本では、2000年にヒトに関するクローン技術等に関する規制が法律で定められ、クローン人間を作ろうとしたものには懲役10年以下、罰金1000万以下あるいはその両方が課せられます。
案外罪は軽いんですね。
/人◕ ‿‿ ◕人\ 君は神にでもなるつもりかい?
人間が踏み込んではいけない領域といわれていますね。
最初のクローン
1996年にスコットランドで誕生した世界初の哺乳類クローン羊ドリーです。
ドリーは6歳のメス羊の細胞からクローンされ誕生し6歳で病死しました。その後、ドリー作成に使用された細胞からその後10匹の羊が誕生。
そのうちの4匹は羊の寿命である10年生きたと言います。
世界を駆け巡ったセンセーショナルなニュースだったことを覚えています。
どうやらドリーのクローンまで作られているっていうから驚きです。
クローンのクローンをつくるっていうんだから、それって遺伝子的にどこか欠陥でも出てもおかしくないんじゃないか?
と思いますが、近親相姦と違ってそういうこともないようです。
世界初のクローン人間
アメリカのシカゴに暮らす科学者・リチャード・シードは世界初のクローン人間を作ることを発表。
シードは不妊治療を目的としたクローン人間を作ると事業を立ち上げ、自分の妻に協力してもらい実行。
しかし、失敗に終わってしまいました。
これを受けて世界各国ではヒトのクローンを規制する法整備が行われ、日本でも制定されたのです。
この話の時点ですでにクローン人間を「自分の子を産むための道具」に使おうという明確な意思があったことがわかります。
失敗してよかったね。
クローン人間成功例
2009年。
イタリアの有名婦人科医セベリノ・アンティノリがこれまで3人のクローンベビーを誕生させたことを発表。
ヒト・クローン技術で誕生した赤ちゃんは、男の子2人、女の子1人で皆健康に育っており9歳になると言い、物議を醸しました。しかし、真意は不明であると言われています。
他にも作った医師がいたような気がします。
最後に想うこと
2017年現在、ips細胞が実現した今、クローン人間をつくることなどたやすいのではないかと思われます。
ただ、作ることは倫理的に大きな問題があるし、ましてや「提供者」のような使い方をするのはもってのほかです。
でも私は思うのです。
自分の愛猫のクローンがつくれるとしたら?
避妊手術を受けて子供が作れない身体になってしまったうちの猫ですが、もしクローン猫が合法になったら、つくっちゃうかもしれないと。
クローン猫をつくって赤ちゃんを産ませたいなーとか、死んでもまだクローンがいるから、とか。
人間は化学の発展とともに、たくさんの禁忌を犯してきました。
これからますます発展していく医学の進歩と、人間の欲望と、どう折り合いをつけていくのか。
とても深く考えさせられる作品でした。
これだけ(といってもまだもっと考えていたけど書いてないことがある)話が膨らんでしまう作品なので、ノーベル賞を取って当たり前なのかもなー、よく考えたらips細胞もノーベル賞取ったんだっけーと思い出しました。
長くなったうえに話がそれまくったけど、ストラテラ飲んでないADHDの頭の中って耐えずこんな感じなんだぞっていうことがわかっていただければと思います?
なんか違うけど終わり。